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365日の繰り返しに「進歩」を。スタッフの声から生まれた職場環境の改善策

佐賀市諸富町にある「介護老人保健施設 徐福の里」。ここでは日々の業務改善を通じ、スタッフが心身ともに健やかに働ける環境づくりと、利用者への質の高いサービス提供の両立に取り組んでいます。
今回は、これまでの職場改善の歩みと、その根底にある現場への想いについて、施設の中心となって運営に携わるスタッフの皆さんにお話を伺いました。

お話を伺った方

介護老人保健施設 徐福の里

介護老人保健施設 徐福の里

事務長 森山 繁彦さん (左)
管理課長 龍 利美さん (中)
介護長 鵜池 聖さん (右)

現場の声を改善のタネにする「生産性向上委員会」

徐福の里では、令和6年に「生産性向上委員会」を発足し、介護テクノロジー機器の導入や業務の効率化を通じたスタッフの負担軽減に取り組んでいます。

森山さん:以前から多職種のスタッフが集まる会議の場で、現場の困りごとを拾い上げてきましたが、そこからさらに一歩進め、業務改善にも踏み込む形へと発展させたのが、現在の「生産性向上委員会」です。

現場の声に耳を傾けながら、業務の無駄と心身の負担を減らし、より良いケアへとつなげていけるよう、日々話し合いを続けています。

また、当施設がある諸富町は佐賀市中心部から少し離れていることもあり、以前から採用面での課題を感じていました。だからこそ、ここで働いてくれるスタッフのために、どこよりも「人にやさしい職場環境」を整え、それを施設の魅力の一つとして発信していきたいという思いもありました。

現在はその思いを形にするため、委員会でより専門的に業務改善について話し合っています。例えばオムツ交換一つをとっても、かつては「交換回数が多いほど丁寧なケアだ」と考えられていた時代もありましたが、何度も交換のためにオムツを開閉することは、かえって肌を乾燥させたり、摩擦を増やして肌トラブルを招く原因にもなるのです。また、今は製品の質が上がり、製品の吸水性や通気性も飛躍的に向上しています。
そこで、現場の声を聞きながら、最新の製品性能や利用者さんの状態に合わせて「今の最適なケア」を改めて検討し、マニュアルの見直しを行いました。昔からの慣習にとらわれず、現場の負担を減らしながらケアの質を高めていく方法を、常に模索しています。

── 委員会にはどのようなメンバーが参加していますか?

龍さん:基本的には、各部門の管理職が集まり、現場スタッフから上がってきた声を吸い上げて検討する形をとっています。当施設には、開設時から支えてくれているベテランスタッフも多く、現場を熟知したスタッフが管理職を務めていることも多いんです。現場の状況や課題を肌感覚で理解しているメンバーだからこそ、スピード感をもって、実態に即した改善策を打ち出せることが、大きな強みになっています。

試行錯誤の末にたどり着いた、スタッフを支える介護テクノロジ―機器

徐福の里では、会議や委員会を通して見えてきた課題に対し、10年以上前から積極的に介護テクノロジ―機器の導入に取り組み、スタッフの身体的負担の軽減を図ってきました。

── 実際に現場の負担軽減につながった機器を教えてください。

森山さん:以前から人材の確保に課題を感じていましたが、そんな状況下で何より辛かったのは、介助の際の「抱え上げ」で腰を痛め、離職せざるを得ないスタッフがいたことでした。少しでも身体的な負担を減らし、そうした離職を防ぎたいという思いから、12〜13年ほど前からさまざまな機器を試してきました。

最初はゴムの張力で腰を支えるタイプ、次は電動アシスト式、さらに空気圧式の装置など、本当に色んな機器を試しました。しかし、実際に使ってみると、装着に時間がかかりすぎて現場では使いにくいなど、実用面での壁に直面しました。

そうした試行錯誤を重ねながら、私たちの施設に本当に合うものを探してきました。その中で、特に定着したのが「モーリフト」というリフト式の機器です。専用のシートを使って利用者さんを吊り上げて移動できるため、ベッドからの移乗や入浴介助の際にも、スタッフが力任せに抱え上げる必要がなくなりました。

ボタン一つで利用者の移乗をサポートできる「モーリフト」

龍さん:見守り機器についても、現場から「とても役に立っている」との声が多く上がっています。以前は、ベッドの下に敷いたマット式のセンサーが鳴るたびに、スタッフが必ず駆けつけなければなりませんでした。しかし、急いで行ってみると何事もなくお休みになられていて、その間に別の部屋からコールが鳴り、また走って向かう……ということも少なくありませんでした。
なかには、センサーが鳴った部屋の対応をしている間に、別の方が転倒してけがをされてしまったケースもありました。現場からは「状況さえ分かっていれば、より優先度の高いお部屋へ先に行けたのに」という切実な声が上がっていました。

そうした声に応える形で導入した現在のシステムでは、タブレット端末で状況を確認し、「今すぐ行くべきか、それとも少し様子を見ても大丈夫か」を手元で判断できるようになっています。これにより無駄な動きが減っただけでなく、スタッフの心理的な焦りも大きく軽減されました。

タブレットで簡単にベッドの状況を確認することができます

もちろん、機器がすべてを解決してくれるわけではありません。それでも、機器に任せられる部分を増やすことで、スタッフに身体的・精神的な「ゆとり」を持ってもらう。そのゆとりこそが、利用者さんとじっくり向き合うための大切な時間につながっていると感じています。

「大切にされている」という実感が、長く働ける理由

── 徐福の里では長年働き続けるスタッフの方が多いそうですが、長年ここで勤務されている鵜池さんから見て、その理由はどんなところにあると感じていますか?

鵜池さん:一番は、着実にステップアップできる機会があることだと思います。私自身も最初は通所介護の担当でしたが、介護主任を経て、現在は介護長という役割を任せていただいています。長く貢献してくれているスタッフを大切にし、責任あるポストへと導いてくれるサポート体制は、働く上での大きなモチベーションになっています。

また、腰痛対策の機器導入のように、現場の切実な声をすぐに吸い上げて形にしてくれる風通しの良さも、「守られている」という安心感につながっていると感じます。

── 職場の雰囲気づくりで、特に大切にされていることはありますか?

森山さん:仕事だけの付き合いに関わりを限定せず、スタッフ間の結束力を高める工夫をしています。例えば、月1回のペースでゴルフ部などの活動を行っているのですが、まるで学生時代の部活動のような雰囲気です。他にも色んな部があるんですよ。

職場を離れた場所で共通の趣味を楽しむ時間が、お互いの意外な一面を知るきっかけになり、結果として仕事中の連携もスムーズになる。そうした心の通い合う環境があることが、徐福の里らしい働きやすさの土台の一つになっているのだと感じています。

進化し続ける現場が、最高のケアを生む

── 今後、さらにどのような職場環境を目指していきたいですか?

森山さん:働きやすい職場環境を整えることはもちろんですが、職場以外でも趣味などを通じて集まれる環境や関係性をもっと築いていきたいと思っています。また、最新の介護テクノロジ―機器についても活用できる場面をさらに広げていく予定です。テクノロジーを上手に味方につけて、今よりもっと「楽に」仕事ができる環境を整えていければと考えています。

介護の現場は365日休みがなく、毎日同じことの積み重ねに見えるかもしれません。しかし、そこに新しい技術や工夫という進歩が加わることで、スタッフは自身の成長を実感し、日々の仕事に新たなやりがいを見出すことができます。これからも常に新しいものを取り入れながら、みんなが心から「楽しく、楽に」働ける場所をつくっていきたい。その先に、利用者さん一人ひとりの豊かな笑顔があると信じています。