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「ありがとう」が身近にある福祉の世界 ── 技能五輪出場の高校生が語る「人の人生を支える」介護の魅力
2025年度の技能五輪全国大会で行われた、介護職種のエキシビション(公開競技)。この大きな舞台に、佐賀県立神埼清明高校に通う大川ルツさんが挑戦しました。
高校で専門的に福祉を学ぶ大川さんに、挑戦を通して感じた成長、そしてこれからの学びへの思いについて、じっくりとお話を伺いました。

大川ルツさん
青年技能者の技能レベルの日本一を競う「技能五輪全国大会」。長い歴史を持つこの大会では、2026年度から新たに「介護職種」が正式な競技種目として加わることが決まっています。
これに先立ち、2025年の技能五輪全国大会で同種目のエキシビションが開催されました。このエキシビションでは、高校生は1名のみ出場が認められており、その出場者を決める選考会で最優秀賞を受賞し、技能五輪全国大会エキシビションへの出場切符を手にしたのが、佐賀県立神埼清明高校で福祉を学ぶ大川ルツさんです。
──選考会では、どのような競技が行われたのでしょうか。
選考会では、「排泄・入浴・食事」の3つの課題に取り組みました。評価されるのは技術面だけではなく、限られた時間の中で、利用者の方に寄り添った丁寧な支援ができているかという点も評価されます。
3つの課題それぞれを25分という制限時間内に終える必要があり、そのために動作や手順を意識しながら、練習を重ねて本番に臨みました。

──選考会に向けて練習を行う中で、特に難しく感じたのはどんなことでしたか?
特に難しかったのは、声かけやコミュニケーションの部分です。
ただ言葉をかけるだけでなく、利用者の方に穏やかな気持ちで接していることが伝わるよう、声のトーンやイントネーションまで意識する必要がありました。
練習を重ねるうちに、動きや声かけが自然と身についていき、選考会で最優秀賞を受賞できたときは、本当に嬉しかったです。

──選考会での受賞を経て、高校生代表として技能五輪全国大会のエキシビションに臨まれましたが、当日の会場の様子はいかがでしたか。
大きな国際展示場が会場でしたが、建築大工や建具など他の職種の競技も同時に行われていたので、最初はあまり緊張しませんでした。
ですが、いざ順番が回ってきて競技が始まると、今までに感じたことがないくらい緊張したのを今でも覚えています。それでも、これまでの練習の積み重ねに加え、直前まで先生方やサポート役の同級生と手順を確認していたので、その感覚を思い出しながら、落ち着いて競技を行うことができました。
──技能五輪全国大会のエキシビションへの出場や選考会を通して、大川さんの中で変化したことはありましたか?
この経験を通して、知識や技術が深まりました。特に、自分の介護技術を高めることができたのが一番の成長だと感じています。

介護系の仕事をするご両親の姿を見て育った大川さんは、幼い頃から施設に遊びに行くなど、高齢者の方と関わる機会が多かったそうです。そこで介護福祉士という職業に興味を持ち、神埼清明高校の総合学科(生活・福祉系列)への入学を決めたと話します。

──普段、学校ではどんな授業を受けているのですか?
私が通っている学校は、実技の授業がとても充実しています。知識を学ぶだけでなく、体を動かしながら学べるので、自分の手でやればやるほど介護への理解が深まっていくのを感じます。毎回、実技の授業がとてもおもしろいです。
また、実際に介護施設を訪れ、現場で働く介護福祉士の方の動きや声かけを見学させてもらったり、私たち自身が利用者の方のサポートをさせてもらったりする機会もあります。
──実践しながら学ぶことで、はじめて気付けることもありますよね。福祉の授業を通して、新たに発見したことはありますか?
授業では、利用者役と介護者役を交代で行うことがあります。利用者役をやってみると、介護する側とはまったく違う視点から感じることがたくさんありました。「ここが気になったな」、「声かけはこうした方がいいかも」といった改善点が見えてきます。
介護者役をするときも、利用者の立場や目線からアドバイスがもらえるので、とても参考になります。

──高校で福祉を専門的に学び始めてから、介護に対するイメージで変わったことはありますか?
福祉を学ぶ前は、利用者の方の体を支えることが多い力仕事で、大変な仕事なのかなというイメージがありました。でも、学びを深める中で、介護は利用者の方の生活や心の支えになる本当にすごい職業なんだと感じるようになりました。
サポートされる側の気持ちについて学ぶ授業もあり、利用者の方の人生の背景まで想像しながら、「今、自分がどういう支援をするのが一番いいのか」をよく考えるようになりました。
──実技や座学を通して、さまざまな視点から福祉を学んでいるのですね。一緒に勉強している皆さんの雰囲気はどうですか?
このクラスには、介護福祉士だけでなく、保育士や看護師など、人と関わる仕事に就きたいという様々な夢を持った人が集まっています。福祉に関わる幅広い分野を学べる環境なので、そんな仲間がいるのは心強いです。

──将来はどのような道に進みたいと考えていますか?
私は将来、利用者の方の気持ちに寄り添い、丁寧な支援をすることで、「この人に任せれば安心だ」と思ってもらえるような人になりたいです。
まだ具体的な職業は決まっていませんが、高校卒業後は進学し、福祉の知識や技術をさらに深めながら、自分に合った道をじっくり考えていきたいと思います。
──最後に、福祉・介護分野に興味のある生徒に向けてメッセージをお願いします。
福祉や介護の現場では、「ありがとう」という言葉がとても身近にあります。実習で訪れた施設で、利用者の方や職員の方から感謝の言葉をかけてもらえると、すごく力になりますし、自分の成長にもつながっていると感じます。
福祉系の高校で学ぶことは、将来の可能性や選択肢を大きく広げてくれるものだと思います。少しでも興味があれば、ぜひ福祉のことを学んでみてほしいです。高校で学ぶ介護の経験は、将来につながる大きな一歩になると思うので、迷っている人も、ぜひ一歩踏み出してみてください。
