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お話を伺った方

黒岩正孝（くろいわまさたか）

特別養護老人ホームすみれ園　施設長
コンピュータ業界から介護業界へ転職。生活相談員を経て、平成24年にすみれ園の施設長に。現在は、佐賀県老人福祉施設協議会の副会長。プライベートでは、大町町の小中学生へ剣道の指導をしている。

浦川由紀子（うらかわゆきこ）

特別養護老人ホームすみれ園　介護スタッフ
短大を卒業後、老人保健施設で介護スタッフとして13年間勤務。その後、令和2年にすみれ園に入職。令和4年12月から1年間の産休。

特別養護老人ホーム、短期入所生活介護、ケアハウス、住宅型有料老人ホーム、デイサービスセンター、ケアマネジメントサービスを展開している社会福祉法人聖仁会。「大町町に介護施設を」という想いで地元の３つの病院（順天堂病院、川﨑整形外科、戸原内科）の出資を受けて開設された施設で、各病院と連携して安心な介護を提供している。今回は、特別養護老人ホームすみれ園の施設長・黒岩正孝さんと、スタッフの浦川由紀子さんにお話を伺った。

スタッフみんなで利用者さんのためにできることを考える

同施設では、思いやり・感謝の気持ちで接することを心がけているという。

黒岩正孝さん（以下、黒岩）「介護の現場では、利用者さんにどういう言葉をかけてどんな態度をとるかがとても大切です。新人教育の場でもよく話をするのですが、利用者さんを自分の親だと思って接すれば、きっと良い介護に繋がるはずです。常に思いやりと感謝の気持ちで接することで、信頼関係は育まれていくと思っています」

現場で利用者さんと接している浦川さんに、心がけていることを聞いてみた。

浦川由紀子さん（以下、浦川） 「利用者さんの想いを感じることを大切にしています。自分の気持ちを訴えられる方は、直接コミュニケーションがとれますが、中には自分の気持ちを伝えられない方もいらっしゃいます。そういう方は、表情や行動など、いつもと違うところがないかを確認しながら介護にあたっています。言葉だけに頼らず、そういう部分からも察することができるよう、常に心がけています」

アットホームな雰囲気の同施設では、スタッフ同士の仲も良く「利用者さんに対して何ができるか」ということを、皆で一緒に考えているという。

浦川「ここ1年くらいの間に、体操する時間が少しずつ習慣化してきたのですが、これもスタッフから上がった声がきっかけでした。“健康づくりのために、利用者さんに体を動かしてもらいたいが、何に取り組んだらいいか”という声があり、YouTubeの体操動画などを活用しながら取り組むようになりました。今では、体操の時間になったらお部屋から出てこられる方も増えてきて、各自ができる範囲で体操に取り組まれています。利用者さんが体を動かす時間を、スタッフが考えて作り出せたことをとても嬉しく思っています」

スタッフが協力し合う職場環境だから産休後も復帰しやすい

同施設では、20代～80代という幅広い年齢のスタッフが働いている。

黒岩 「年齢層はさまざまですが、スタッフ同士の仲が良いのも特徴です。当施設は、多床室の施設ということもあり、みんなで協力し合う協調性が求められます。みんな和やかな雰囲気で仕事に取り組んでいます」

浦川「職場の雰囲気も良く、プライベートも相談にのってもらっています。私は現在妊娠中で、これから産休に入る予定です。初めての妊娠ですが、周りには産休を利用した経験のあるスタッフも多く、いろいろ相談することができました。仕事面でも、とても気を使ってもらい、助けてもらっています。産休復帰後も、またいろいろ相談できればと思っています」

黒岩 「スタッフ間の雰囲気というのは、知らず知らずのうちに利用者さんにも伝わるものです。ですから、問題を小さいうちに発見・解決するための取り組みとして、全職員との面談も実施しています。何か問題を抱え込んでいないか、困っていることはないかなど、直接一人ずつから話を聞き、出てきた問題点については、すぐに改善策を講じます。スタッフの声が通りやすい風通しの良い職場環境づくりに努めています」

ICT化や新システム導入で心にゆとりをもった介護を目指す

求めている人材像について伺ってみた。

黒岩「ただ漫然と仕事をこなす人ではなく、日々変化する介護を勉強するとか、ケアマネージャーを目指すとか、そういう向上心がある人を求めています。また、笑顔で明るくコミュニケーションがとれる、というのも大切な要素だと思います」

向上心のあるスタッフがやりがいをもって働けるよう、同施設における人材育成や職場環境も変化させているという。

黒岩「コロナ前は外部研修を受けに行っていましたが、今は専門学校と契約をしてWEB研修を開催しています。外部研修の時は、日程の都合などもあり、限られた人数しか受講できていませんでしたが、WEB研修に切り替えた今では、150くらいのプログラムをオンラインで24時間いつでも受講できるので、全員が受講できるようになりました。リーダー研修、メンタルヘルス研修などもあり、学ぶ気持ちがあれば、いつでも学べる環境になっています」

浦川「私は、食事介助や移乗介助のWEB研修を受けました。学校で勉強した内容でも改めておさらいをしたり、変化している新しい方法を学ぶことができ、とても良い機会になりました」

多床室の良さを活かして、あたたかさを感じられるサービスを提供してきた同施設。これからも、生活環境が変化した中で孤独を感じがちな利用者さんに、いつも隣に誰かいるという安心感を感じてもらえる施設を目指しているという。

そのためにも、スタッフが心にゆとりを持てるような職場環境づくりにも積極的に取り組んでいる。

黒岩「ICT化を進めて効率化を図ったり、スタッフの腰痛予防とより安全な介護を目的として移乗介助のための介護ロボットを導入したり、スタッフ間のスムーズな連絡のためにインカム（無線機器）を取り入れています。これらは、利用者さんの負担を軽減する目的もありますが、スタッフが仕事に追われることで心を失くしてしまうことを防ぐための取り組みでもあります。スタッフの負担をできるだけ軽減し、忙しさを解消して、心に余裕が持てるような取り組みを進めることが、利用者さんに心地よく過ごしてもらうことにも繋がってくると考えています。今後も、スタッフとも相談をしながら、より良い介護を目指していきたいと思います」