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お話を伺った方

中島明子（なかしまあきこ）

特別養護老人ホーム真心の園　介護課長
保育士として保育園へ勤務していたが、結婚を機に離職。その後、真心の園のパート職員として約1年半勤務した後に、福祉の学校へ通い（１年）介護福祉士を取得し、入職。特別養護老人ホームに約14年勤務した後、グループホームのホーム長として5年勤務。その後、2022年より現職。

石川幸二（いしかわこうじ）

特別養護老人ホーム真心の園　入所支援係長
介護業界に携わって約20年。2007年に真心の園へ入職。特別養護老人ホーム、居宅介護支援事業所で、介護職・生活相談員・施設介護支援専門員として勤務し、2016年より現職。

佐賀県の寿恵会（昭和43年創立）と鹿児県の椎原会（平成９年創立）が、平成20年に統合合併して発足した社会福祉法人椎原寿恵会。両県で、特別養護老人ホームやケアハウス、グループホーム、居宅介護支援サービス事業、障害者支援施設、保育園などを展開し、いずれも地域のニーズに的確に対応し、質の高いサービスを提供している。その中の一つ特別養護老人ホーム真心の園は、新しい時代にふさわしいユニットケアを実現するため、平成25年に現在の場所（鳥栖市村田町）へ移転改築をした。 今回は、真心の園の施設長・中島明子さんと、入所支援係長・石川幸二さんにお話を伺った。

『暮らしの継続』を実現するために大切にしているのは“知る”こと

創設者である中川原寿恵子初代理事長は、早くに夫や義母を亡くした際に自身が感じた孤独感から、「お年寄りの孤独な気持ちに寄り添いたい」という想いをもとに始めたという同施設。地域に根ざし、地域に恩返しができる施設を目指して、平成25年に現在の場所（鳥栖市村田町）へ移った際に、ユニット型の特別養護老人ホームとなった。

中島明子さん（以下、中島）「地域の方の伴走者になることを心がけてケアを行っています。以前は、大部屋で大勢の方をケアしていましたが、移転を機にユニット型になると決まりました。そこから “ユニット型だからできること”について学びを深め、実際にユニットケアを行っていく中で、『ユニットケア＝暮らしの継続』であることを実感しました」

真心の園では、『暮らしの継続』を実現するために、利用者さんとの信頼関係構築や環境づくりを重視しているという。

石川幸二さん（以下、石川）「中でも、利用者さんの暮らしを“知る”ことをとても大切にしています。例えば、熱いお茶とぬるめのお茶はどちらが好きか、賑やかにおしゃべりをするのが好きか静かに過ごすのが好きか、という具合に利用者さんの生活スタイルや好みを把握しておくことで、より心地よく過ごしていただけると考えています。100％自宅で生活するような暮らしは叶えられないかもしれませんが、できる限り普段の生活に近づけるように、入所時には利用者さんご本人はもちろん、ご家族の方からも実際の生活の様子を伺うように努めています。入所後も利用者さんからちょっと…とお声掛けがあれば、すぐに足を運んで話を伺うなどして、安心して生活いただけるように努めています」

施設で過ごす日々の生活の中で“知る”ことも多いという。

中島 「暮らしは自然なものなので、施設で生活することで改めて気づくこともあります。先日は、ある利用者さんのお部屋ではタオルの補充を行う際、注意点の申し送りがありました。洗濯したタオルをお部屋の棚に戻す時は、タオルの上に置くのではなく、タオルの一番下に置いてほしいという要望があったという内容でした。些細なことだと感じるかもしれませんが、利用者さんにとっては大切な暮らしの継続です。報告書やミーティングなどを通して、スタッフ間でしっかり情報共有を行い、利用者さんの暮らしやすさに繋げています。その他、ベッドの手すりの位置を調整したり、利用者さんが大切にされているものをお部屋へ持ってきていただくなど、ハード面での環境づくりも大切にしています」

一人ひとりの『暮らしの継続』を意識し、より細やかなサービスを提供している。

スタッフが長く元気に働ける職場環境づくり

外国人スタッフの登用などにも、積極的に取り組んでいる同施設。スタッフが長く元気に働ける場を目指して、明るく働きやすい職場環境づくりにも力を入れているという。

中島「どのようにしたら、スタッフが長く元気に働くことができるかを考え、さまざまな取り組みを行っています。ノーリフティングケア（抱え上げない介護）もその一つです。介護の現場では、入浴介助や移乗介助の際に利用者さんを持ち上げる場面が多くあり、スタッフの腰痛の原因の一つとなっていることが指摘されてきました。その課題を解消するために取り組んでいるのが、抱え上げない介護です。抱え上げられる側の利用者さんにも余計な緊張感や負担をかけることなく、質の高いケアの提供に繋がっていると感じています」

利用者への介護の質の向上とスタッフの負担軽減を目的として、ICT導入も積極的に取り組んでいる。

中島 「昨年末から施設全体で活用しているのが『眠りSCAN（スキャン）』です。その名の通り、眠りをスキャンするもので、その方が眠っているのか、起きているのか、また眠りが浅くなっているのか、などが一目で分かるようになっています。これらの情報を活用することで、利用者さんの眠りの質の向上や生活リズムを整えることができ、また、利用者さんの動きだしの予測ができることでベッドから落下などの事故リスクも軽減できるようになりました。これからどんどん活用して、スタッフの身体的・精神的な負担軽減にも繋げていこうと考えています」

質の高いケアの提供を目指した人材育成のための研修にも積極的だ。

中島 「各研修にはそれぞれのフロアの代表者が参加して、持ち帰った学びをフロア内で共有するようにしています。一度にたくさんのことを詰め込むのではなく、“一つずつ丁寧に”を心がけ、研修で学んだことをしっかり身につけるようにしています」

求めているのは、『想い』を共有できる人

同施設のスタッフの年齢層は、20代～70代までと幅広いが、協力し合いながら仕事に取り組んでいるという。

中島「20代のスタッフと70代のスタッフが同じ仕事をすることは難しいですが、それぞれできる範囲での仕事を頑張ってもらっています。年齢を重ねたスタッフは、体力的には若いスタッフには及びませんが、丁寧に仕事をしてくれますので、食事介助などのきめ細やかな配慮が必要な仕事をお願いしています」

利用者が笑顔で生活し、スタッフも楽しく仕事ができる環境を目指しているという同施設。職場の雰囲気についても尋ねてみた。

石川 「一言で言うと、結束力の強い職場だと思います。介護はチームで行うものですが、特にユニット型の場合はユニット毎に同じスタッフが担当しているので、協力して仕事をするという意識が高いと思います。勤務時間帯が違ったりするので、日頃はなかなか顔を合わせないスタッフもいますが、“利用者さんのために”という共通の目的のために力を合わせて仕事をしています。設立時の想いを大切に、これからも地域との交流を深めて、さらに必要とされる施設を目指していきたいと思います」

求めている人材について伺った。

中島「介護は、利用者さんやご家族という相手がいる仕事なので、相手のことを思いやることができる方、相手の立場になって物事を考えることができる方であってほしいと思います。明るく笑顔が素敵な方と一緒に働きたいですね。また、当施設は“自分や自分の親を入所させたい”と思える施設を目指していますので、そういう想いを共有できたら嬉しく思います」