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お話を伺った方

中野 孝弘（なかの たかひろ）

特別養護老人ホーム杏花苑　総務部（施設相談員）主任
通信設備の整備技術者として働いていたが、足の骨折を機に退職。療養中に受けたケアに感銘を受けたことが、介護の道を志すきっかけになった。その後ナイスランド北方に入職。資格取得に励み、法人内のあらゆる部署を経験し現在に至る。

野村 健一郎（のむら けんいちろう）

デイサービス杏花苑 介護福祉士
短期大学の保育科を卒業後、介護の道を志しさらに1年間短期大学で介護を学ぶ。その後ナイスランド北方に入職し、デイサービス杏花苑に所属。

一口に介護事業所といっても、その中では事業所ごとに工夫を凝らしたさまざまな取り組みが実施され、より良い介護サービスを実現させている。社会福祉法人ナイスランド北方（以下、ナイスランド北方）では、リハビリ専門スタッフの配置、クラブ活動、地域交流、広報などに力を入れており、チーム一丸となり、利用者に寄り添った介護事業を行っている。介護の現場で必要とされる知識やスキルは、思った以上に幅広いのかもしれない。

今回お話を伺ったのは、異業種から転職し勤続20年の中野 孝弘さんと、保育と介護を学んだあと入職し勤続14年の野村健一郎さん。長く勤めてきたお二人から、介護の現場で行われるさまざまな取り組みと、これから一緒に働きたい人材について伺った。

理念を実現するための、介護サービスの多様な切り口

ナイスランド北方は、武雄市北方町にある杏花苑を中心に、5つの施設を運営。介護、生活支援、リハビリ、障がい福祉サービスなど、高齢者だけでなく障害のある人にも必要な支援を提供中だ。

杏花苑は鬼の鼻山の麓、2つの池に挟まれた自然豊かな場所にある。理事長の「自然に恵まれた土地で最善のサービスを提供したい」という想いからこの地に建てられた。

豊かな自然に囲まれた杏花苑

多様なサービスを提供していくために掲げる法人理念は、「高齢者及び障がい者の自立と尊厳を支え、福祉を通して地域社会に貢献する」。実現のため、利用者の背景や人となりに寄り添うことを心がけている。

中野 孝弘さん（以下、中野）「利用者さんの今だけではなくて、生い立ちや暮らしを伺うようにしています。これまでの生活や趣味を大切にして、それらを繋げられるような支援を目指していますね。

たとえば、プロ野球が好きだった方には、施設内でテレビ観戦できるようにします。その方が暮らしてきた日々に寄り添えるよう心がけています」

野村 健一郎さん（以下、野村）「利用者さんから伺ったお話やご要望は、スタッフ同士でも共有しています。介護サービスのアイデアも出て、スタッフみんなが利用者さんの想いに向き合えるようになります」

中野さんと野村さんは、介護の現場で働きながら、理念をかたちにしている。

ナイスランド北方が力を入れている取り組みの一つが、「法人リハビリ部」。リハビリ専門のスタッフを配置し、機能回復の支援に力を入れている。

中野「法人リハビリ部では、料理、音楽、菜園活動を通じて楽しく体を動かせる『クラブ活動』も行っています。普段は表情が少ない方も、そこではいきいきとした顔を見せてくださるので、嬉しいですね」

ナイスランド北方は情報発信にも積極的で、ブログと年2回発行の広報誌で施設の様子を伝えている。広報誌は、各施設の担当者たちが集まり制作。法人の理事長が自ら描いた作品が表紙を飾る。

中野「施設内の様子を伝えることは、地域と繋がるきっかけにもなります。インターネット上でも発信することで、普段なかなか会いに来られない遠方に住むご家族などにも、『元気な姿を見ることができた』と、喜んでいただいています」

スタッフによるカフェ。利用者に楽しんで過ごしてもらえるよう、さまざまな取り組みを行なっている。

新卒や異業種からの転職者も長く働ける職場

ナイスランド北方には、勤続10年を超えるスタッフが多い。中野さんは入職して20年。以前は通信用ケーブルをメンテナンスする技術者だったが、仕事で大きな骨折をしてしまったことが介護の世界に足を踏み入れるきっかけになった。

中野「骨折のリハビリで本当に手厚くケアしていただきました。体を動かせない中、親身になって支えていただき感謝の気持ちでいっぱいでしたね」

そんな経験もあり、復帰後の職探しでは、介護の仕事を視野に入れ始めたとのこと。とはいえ、これまでと全く違う分野の仕事。不安はなかったのだろうか。

中野「子どものころ良くしてくれたおばあちゃんが、高校を卒業して以来会えないまま亡くなってしまったんです。おばあちゃんに何もできなかった心残りもあったんですよね。転職には不安もありましたが、この道に骨を埋める覚悟で、ヘルパー2級（現在は介護職員初任者研修に相当）を取得し、ナイスランド北方に入職しました」

その後は経験を積みながら、介護現場の国家資格「介護福祉士」、ケアプランを考案する「ケアマネジャー」、福祉分野の総合的な相談役として活躍できる「社会福祉士」の資格を取得。

現場で多くの貢献ができるようになると、次第に自信がついていった。仕事が大変なときでも、利用者からの「ありがとう」の言葉を聞くと、気持ちが安らぎ、仕事を頑張れるのだそう。中野さんはそんな職場への転職を、「いい選択でしたね」と振り返る。

一方、デイサービスに勤める野村さんは、ナイスランド北方に入職し14年。人と接する仕事をしたいという想いから、短期大学で保育を学び、そこからさらに介護を学んだという。

野村「実習では、子どもと高齢者両方に接してきました。特にお話をすることが中心の高齢者との向き合い方に魅力を感じ、介護の道を選びました。

人と人が直接向き合う仕事なので、感謝の言葉を直接かけていただけます。利用者さんから名前を呼んで頼っていただけたときも嬉しいですね」

2人とも、10年以上この職場で仕事を続けられたのは、いつでも相談に乗ってくれる気さくな仲間が多いからだと振り返ってくれた。

チームの力で利用者を支えていきたい

ナイスランド北方の職場は、スタッフそれぞれが協力し合い作っている。上司や同僚との人間関係も良く、何でも話しやすい雰囲気がある。お二人とも、職場でスタッフから相談を持ちかけられることは少なくないとのこと。

野村「後輩からは、介護技術に関する質問を受けることが多いです。休憩時間や、送迎の帰り道に車内で話を聞くこともありますね」

中野「心がけているのは、親身に聞いてなるべく早く解決すること。進展がないと不安が募りますからね。スタッフにとって働きやすい環境は必要です。一方でやはり、根底にあるのは利用者さん。スタッフたちの相談事も、良いサービスの実現に繋げていきたいですね」

現在、ナイスランド北方では共に働く仲間を募集している。一緒に働きたいスタッフの人物像は、「利用者さんの気持ちに寄り添い優しい対応ができる方」「何事にも誠実に取り組む方」。経験者はもちろん、異業種からの挑戦も歓迎だ。

さらに、チームの力で一緒に介護サービスを提供していきたいという想いがある。

2020年には、特別養護老人ホームに暮らす利用者の「家に帰りたい」という強い想いに応えるため、自宅での生活に戻る「在宅復帰」を目指すチームを結成した。リハビリ専門スタッフと介護・看護スタッフが体の動作や生活に関わるリハビリを、ケアマネジャーが復帰後の生活を想定した家族へのヒアリングや、関係部署への申し送りを実施。さらに、専門スタッフ同行のもと、利用者の一時外出や家屋調査も実施した。

スタッフの連携と、利用者の懸命なリハビリが実を結び、秋には在宅復帰が実現。今でも元気に生活を続け、ナイスランド北方に年賀状を送ってくださるそうだ。チームの力で実現させた在宅復帰は、杏花苑にとって初めての実績なのだそう。中野さんは「感慨深い体験でした」と振り返る。

中野「利用者さんだけでなく、ご家族からもお礼を言っていただけることがあります。感謝の気持ちをいただけるのは、スタッフ一人の力ではなく、みんなで協力し合ってケアに取り組んできたから。スタッフそれぞれに、特技や特徴、これまで培ってきた経験があると思います。それらを活かしながら、一つのチームとして、力を合わせて利用者さんを支えていきたいですね」