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お話を伺った方

角 吉美（すみ よしみ）

ケアハウス コスモスの園 副主任
新卒で大手ホテルに入職。ホテル業界で20年以上勤めた後、佐賀に戻り専門学校へ入学し、柔道整復師の資格を取得する。2013年に健翔会へ入職、デイサービスにて機能訓練指導員を務めた後、ケアハウス コスモスの園へ異動。現在に至る。

門司 誠一（もんじ せいいち）

社会福祉法人健翔会 理事長
健翔会の事務職を経て、2001年にケアハウス コスモスの園の施設長を務める。医療法人の理事、学校法人の役員を兼務しながら現在に至る。その他、佐賀県の老人福祉施設協議会の会長を務めるなど、福祉分野に広い見識を持つ。

どうすれば人の生きがいは育まれるのだろうか。

「利用者さんがやってみたいことやこれまでの経験が活かせる機会を大切にしている」

こう語るのは、社会福祉法人健翔会（以下、健翔会）が運営するケアハウス コスモスの園（以下、コスモスの園）にて副主任を務める角 吉美さん。コスモスの園はどのように利用者の生きがいを支えているのか。働くスタッフの環境はどうなっているのか。

角さんと、同法人の理事長を務める門司 誠一さんに話を伺った。

「この人と話したい」と思われる関係が築けるように

健翔会は、鳥栖市において高齢者福祉から保育までさまざまな福祉サービスを運営している。そのうちの一つがケアハウス コスモスの園だ。ケアハウスとは、比較的低料金で入所、食事の提供その他日常生活上必要なサービスを高齢者に提供する施設で、2022年3月現在、50名が入居しているという。

角さんに仕事内容について伺った。

角 吉美さん（以下、角）「利用者さんの介護サービスの利用状況やご家族からの要望などを把握して、スタッフに共有したり、利用者さんの食事、お風呂、その他生活のお手伝いをするのが、日々の仕事です」

日々利用者と接する上で大切にしていることは何か、角さんに聞くと「利用者さんと向き合うこと」と教えてくれた。

角「自分が忙しいと、ちょっとしたコミュニケーションがおろそかになってしまいがちですよね。でもそれは絶対しないようにしています。ちょっとしたやりとりでも、目を見て話すとか、声にしっかり耳を傾けるとか、自身の表情や身だしなみを整えるとか。『この人と話したい』と思われる関係が築けるように向き合いたいんです」

利用者と向き合うことは大切にしつつ、生活のサポートにおいては、別の視点も持っていると、角さんは語る。

角「利用者さんができることなのに、代わりにやってしまうのは、避けています。たとえば靴下を1人で履くのが難しい方がいても、『足だけあげてください』『足を入れてみてください』といった声かけをしながら、利用者さんができることはご自身でやってもらえるよう意識しています。もちろん体調の波もあるので、それは判断しながらですが。

すべてやってあげた方が、効率的かもしれない。でも、できることを奪ってしまうのは、利用者さんにとっていいことだとは限らないと思うんです」

利用者の生きがいを支えられる環境づくり

できることを奪うことは、その人の生きがいを奪うことにもなりかねない。角さんは、コスモスの園が「利用者さんの生きがいを支えられる環境であること」も大事にしているという。

角「私が、コスモスの園に携わるようになってから、利用者さんが使える農園をはじめたんです。希望する人は、畑を借りて一緒に農作物をつくったり、手入れをしてもらったり。

スタッフは畑に関する知識があまりないので、詳しい人を呼んだり、利用者さんの中にも慣れている人がいるので教えてもらったりしながら野菜を育てているんです。とれた野菜は、利用者さんに『こんな野菜が育ちましたよ』と共有しつつ、行事のときに調理してもらって食べたり、別の事業所におすそ分けしたりしています。

利用者さんがやってみたいことやこれまでの経験が活かせる機会を大切にしているんです。『ゴルフをやりたい』という方がいて、健翔会内の敷地を利用してゴルフができるグラウンドをつくったこともありました。

それ以外にも、手芸やフラワーアレンジメントなど、利用者さんの話を聞いて、はじめたことがたくさんあります」

健翔会の理事長である門司さんは「利用者さんだけではなく、法人に関わるすべての人たちと丁寧に向き合うのが大切だ」と話す。

門司 誠一さん（以下、門司）「健翔会単独ではできないことをやりたいとき、相談できたり協力してもらえるつながりは重要です。そういう意味でも、人と人が接する上で大切にすべきことという意味でも、丁寧なコミュニケーションが大事なのではないでしょうか」

いい仕事ができるように働きやすい環境を

利用者だけではなく、法人に関わるすべての人たちと丁寧に向き合う健翔会、コスモスの園。そこで働くスタッフには、どのようなサポートがあるのだろうか。

門司「新人スタッフは、2日間の研修があります。法人の成り立ちをはじめ、介護講習や接遇マナーを学ぶ機会がしっかりあります。研修担当は、先輩スタッフなので、顔見知りになるきっかけにもなる。

慣れない環境で不安を感じるのは当たり前だと思うので、できるだけ取り除くようにしているんです。また研修で使用する資料は冊子にしていて、いつでも参照できるようにしています」

上記は新人スタッフの例だが、それだけではなくスタッフの雇用環境改善にも日々取り組んでいる。安心して働いてもらうために、就業規則をアップデートしたのもその一つだ。

門司「数年前に、給与規定も含めて就業規則を全面改訂しました。『これはいかん、あれはいかん』と堅苦しくするのではなく、スタッフの権利を守るという視点を大切にして進めました。その結果、本業に支障がない範囲で副業もOKとしたんですよ。

年間休日日数を入職時の好条件の目安とされる120日間としたのも、一例です。いい仕事をするには、しっかりとした休息が大事なので」

角さんは、門司さんの話に頷きながら、休みやすい文化が現場に根付いていると続ける。

角「子どもが小さいとき、上司からは『子どもが熱を出したら遠慮せずに休んでくださいね』と声かけしてもらっていました。産休や育休をとっている方も多く、ほとんどのスタッフが現場復帰しています。休むことに後ろめたさを感じることは一切ありません」

利用者の生きがいを支える健翔会、コスモスの園。スタッフの働きやすさや生きがいを支える環境があるからこそ、利用者だけでなくスタッフや法人に関わる全ての人と丁寧に向き合うことができるのだろう。