Voice

お話を伺った方

西村 美也子（にしむら みやこ）

株式会社福祉ネットサービス 代表取締役
営業や接遇マナーの講師活動に従事。義父が脳梗塞を患ったことをきっかけに介護の道を志す。2008年に同社を設立、現職。その他、商工会議所女性会の副会長、地域のボランティア活動にも参加。

安心して笑える場所はどのように育まれるのだろうか。

「『みんなで笑う』会社をみんなで創り、いつもみんなが笑顔でいられる会社であること」

佐賀市内でデイサービス、有料老人ホームなど4つの事業所を運営している株式会社福祉ネットサービス（以下、福祉ネットサービス）が掲げるビジョンだ。

なぜ「みんなで笑う」を大切にし、そこからどんな光景がうまれているのか、代表取締役の西村 美也子さんに話を伺った。

共に楽しく過ごそうとする「笑い」

なぜ「みんなで笑う」ことを大切にしているのか。西村さんは次のように教えてくれた。

西村 美也子さん（以下、西村）「設立当初は、『笑い』という言葉を掲げていませんでした。スタッフが、働くなかで大切にしていることをまとめた資料をつくって、そこにあったのが『みんなで笑う』でした。初めはピンとこない部分もあったのですが、スタッフと話をするなかで、大切さに気づきました。

自分が笑っていると、目の前にいる相手も笑ってしまうことがありますよね。お互いに鏡になるというか。相手を尊重しながら、共に楽しく過ごそうという意志を込め『笑い』を大切にしたいと思って、企業理念やビジョンとして掲げるようになりました」

スタッフの資料をもとに生まれた、スタッフブック

まずは利用者の意向を尊重する

「みんなで笑う」を実践するために大切なことはなんだろうか。「まずは利用者さんの意向を尊重すること」と、西村さんは語る。

西村「利用者さんには、うちに通いながらどういう風になりたいか意向を聞き、たとえば『歩けるようになりたい』と言われたときには、『じゃあどうすればいいと思いますか？』とやり取りして、本人の主体性を尊重しながら、方向性を一緒に考えています。

他にも、ご家族から話を伺ったり、利用者さんとスタッフが一緒に過ごしたりするなかでお聞きした、できること、できないこと、好き嫌い、そしてこれまでの人生経験といった情報をあわせて、チームで模索しています」

福祉ネットサービスは、「みんなが笑うために何ができるのか」の視点を常に持っているという。

西村「人間だからやりたくなくなるときもありますよね。そういうときには、利用者さんに、無理にがんばらせることはしません。『しなくてもいい、大丈夫ですよ、今日はゆっくりしてください』と声をかけます。

一方で、利用者さんは、本当にやりたくないのか、他の理由で『やりたくない』と言っているのか、常に考え寄り添います。

例えば『ご飯を食べたくない』と言う利用者さんがいたとき、たまたま、食べる気分ではなく、少し時間が経てば食べたくなるかもしれない。利用者さんの状態をみながら、どのように関わるか模索しています。

模索しても必ずしもうまくいくわけではありませんから、悩むスタッフもいる。そんなときは私や一緒に働くスタッフが、声をかけて話を聞いています」

ふとした瞬間に一緒に笑える人

西村さんの話からは、「みんなで笑う」を実践するには、まずそれぞれの感情を大切にするのが重要なのではないかということが見えてきた。

また、福祉ネットサービスは、日々の生活を大切にしており、それが食事へのこだわりにつながっている。管理栄養士が栄養のバランスを考慮しつつ、地元で採れる旬の野菜を中心に「一穀一汁八菜」の食事を日々提供しているのだ。

西村「食事には、たくさんの笑いの種があふれています。美味しいご飯を食べたとき、配膳された食事を見て美味しそうだと思ったとき。コロナ禍で今は制限されていますが、食事中の会話からもたくさんの笑いが生まれます」

笑顔で話す西村さんに、これからどういう人と一緒に働きたいか尋ねると、「明朗快活で、物事の判断がプラス思考で素直な人」と語る。

西村「そもそも最初から暗い人はいないと思います。成長の過程やさまざまな環境要因によって、暗くなってしまったり、前向きになれなくなったりと。だから、画一的に『明るくほがらか』な人である必要はありません。

やりとりを重ねて、お互いの人格を尊重し、深い芯のところを認め、ふとした瞬間に一緒に笑える。そんな人と一緒に働きたいと思っています」