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お話を伺った方

末安祥子（すえやすしょうこ）

特別養護老人ホームなかばる紀水苑　施設長
看護師として病院に勤務後、ケアマネージャーの資格を取得。開苑と同時に、社会福祉法人紀水会に入職。居宅で6年勤務した後、特養のケア部長となり、2019年から現職。

福島力（ふくしまちから）

特別養護老人ホームなかばる紀水苑　社会福祉事業部部長
曽祖母のお見舞いなどを通して介護業界へ興味が湧いたことから高校で福祉を学ぶも、大学は工業大学へ。その後、就職活動中に友人に誘われて見学に訪れたことがきかっけで、2007年に社会福祉法人紀水会に入職。副主任、主任、課長を経て、2021年から現職。

特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、居宅介護支援事業、ショートステイ、デイサービス、企業主導型保育事業など、さまざまな福祉サービスを展開している社会福祉法人紀水会。みやき町からの要望もあり、2003年3月に特別養護老人ホームなかばる紀水苑を開所した。今回は、特別養護老人ホームなかばる紀水苑の施設長・末安祥子さんと、社会福祉事業部部長の福島力さんにお話を伺った。

利用者一人ひとりの『個』を大切にした介護

多床室で４人部屋が基本となっている特別養護老人ホームなかばる紀水苑。施設の特徴と大切にしていることを伺った。

末安祥子さん（以下、末安）「『健やかで・心豊かに・自分らしく　快適な老後を過ごしていただきたい』という想いで利用者様と日々接しています。また、『個』を大事にし、利用者様一人ひとりの性格やこれまでの生活背景を大切にしながら、ケアに取り組んでいます。利用者様一人ひとりに担当スタッフが付く担当制となっていて、衣替えや身の周りの整理整頓なども行なっています。担当を決めることで、責任感のある充実したケアができているようです。利用者様はもちろん、ご家族も“自分の担当さん”と認識していただき、より身近な存在に感じていただいているようです」

2009年からは、『楽しみ隊』という取り組みも行なっているという。

末安「受け持ちのスタッフが、担当の利用者様のために何かさせてもらう、というものです。例えば、“お墓参りに行きたい”とか“孫の結婚式に出席したい”など、利用者様の願いや希望を叶えてあげる取り組みです」

ここ数年はコロナ禍で実施できていなかったというが、看取りに関する企画などは再開し始めたという。

福島力さん（以下、福島）「実は、入所されている方の奥様が終末期を迎えられているということで、今日の午後から、外出して面会に行くことになっています。“家に帰る”、“お墓参りに行く”、“お見舞いに行く”という何気ない日常ですが、重度の利用者様にとっては大きなことです。必要によっては医療スタッフとも相談しながら、看護師を同伴することもあります」

ご本人はもちろん、ご家族にもとても喜んでいただけるということで、コロナが落ち着いてくれば、もっと実施していきたいと考えているという。

末安「『楽しみ隊』の計画は、担当スタッフが利用者様のご家族と一緒になって作り上げていくので、ご家族との関係性も築くことができます。利用者様の笑顔を見られるだけなく、ご家族からの信頼の高まりを感じることで、『この仕事をしていて良かった』という、スタッフのやりがいにもつながっているようです」

20代、30代の若いスタッフが活躍する活気ある施設

利用者さんとの日々の関わりの中で心がけていることを聞いてみた。

福島「心がこもったプラスアルファのケアということで、『笑顔』をとても大事にしています。利用者様に対してはもちろんですが、スタッフ間でも笑顔はとても大切です。元気でにこにこ笑顔のスタッフが多く在籍しているところが、当施設の魅力でもあります」

末安「特に認知症の方などは表情で感じ取られる部分が大きいので、マスク越しでも分かるような笑顔は大事です。怖い顔をしていれば不安になられるし、優しい笑顔でいれば安心されます。基本ですが、とっても大事なことだと感じています」

介護スタッフの８割が20代、30代の若いスタッフということで、施設内は活気があり、とても明るい雰囲気となっている。離職率の低さと、スタッフの定着率の良さは同施設の特徴とも言える。具体的な取り組みを聞いてみた。

末安「スタッフを育てるための教育体制をしっかり整えています。プリセプターシップ取り入れていて、新人には公私ともに支える役割のプリセプター（指導役）を約２年間つけるようにしています。そこで、何でも相談できる関係性を築くことで、特に新人の離職率はぐっと低くなっています。これは、教育体制や先輩スタッフの心配りの賜物だと思っています」

また、遠方から来るスタッフのために寮を用意したり、産後復帰をスムーズにするために保育事業を立ち上げてスタッフの子どもを預かったりと、ハード面での取り組みも行なっている。

スタッフを大事にした職場環境づくり

“スタッフを大事にすることで職場環境はより改善され、それが回り回って利用者さんを大事にすることにも繋がる”という考えのもと、働きやすい職場環境づくりも行われている。

末安「介護業界は、腰痛での離職が多かったりするので、腰痛にならないための取り組みとして、腰痛体操を行なったり、抱えない介護のためにリフトを導入するなどしています。入浴の際も、車いすから移乗しなくていいように機器を使用しています。このような取り組みを積極的に行なっているため、当施設では腰痛による離職はありません。理事長が現場のことをよく理解してくれているので、やりたいことを実現するスピードが早く、スタッフが本当に働きやすい職場が実現できていると思います」

今後目指す、施設の将来像を聞いてみた。

末安「これからも引き続き『個』を大切にする介護に取り組んでいきたいと思います。そして、利用者様もスタッフもみんなを大事にして、家族のようにあたたかな雰囲気で日々を過ごせる施設にしたいです。先を見据え、先進機器の導入や外国人雇用も進めていけたらと思います」