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お話を伺った方

原田智弘（はらだともひろ）

花のみね弐番館 施設長
大学卒業後、介護福祉業界へ。以来、約30年にわたり介護福祉業界に携わり、各施設で管理者などを歴任。現在は、特別養護老人ホーム花のみね弐番館の施設長を務めている。

宗像克己（むなかたかつみ）

花のみね弐番館 所長／主任介護支援専門員
障害者支援施設に勤務した後、老人保健施設へ。以来、介護業界に約30年携わる。現在は、特別養護老人ホーム花のみね弐番館の所長を務めている。

みやき町で、高齢者福祉から放課後デイサービスまで、さまざまな福祉サービスを運営している社会福祉法人 未来。そのうちの一つである特別養護老人ホーム　花のみね弐番館（以下、花のみね弐番館）は、みやき町で唯一の個別ユニット型特別養護老人ホームとして平成18年に設立された。以来、「ここちよさと安心を」を理念に掲げ、住み慣れた地域の中でいきいきと安心して暮らせるよう、利用者・家族一人ひとりの視点に立ったサービスの提供を追求している。 今回は、花のみね弐番館の施設長・原田智弘さんと、所長の宗像克己さんにお話を伺った。

テーマは「考える」。利用者のために何ができるか

ユニットと呼ばれる10名前後の少人数単位で介護を行っている花のみね弐番館。ユニットごとに個別でケアを行うことで、利用者一人ひとりに寄り添ったケアの提供を実現している。

原田智弘さん（以下、原田）「全部屋が個室で、プライベート空間が守られるというのがユニット型の特徴です。家庭の延長のような感覚で過ごせるので、施設に入っても環境変化が比較的小さいと言われています。当施設では、ご本人さんの愛用品などを持って来ていただいたりして、より自宅に近い雰囲気を感じられるようにしています」

ユニットごとに個別でケアを行っているということで、利用者と接する上で大切にしていることを聞いてみた。

原田「大切にしているのは、利用者さん一人ひとりが、その方らしく生活できるようにサポートすることです。そのために、私たちに何ができるかを『考える』ことをテーマに掲げています。『考える』というのは、とても重要です。ただ漫然と業務をこなすのではなく、『今のやり方でいいのか』『利用者さんのために何ができるか』を常に考え、スタッフ自らが答えを探すことを重視しています」

利用者の一日の過ごし方も、利用者のここちよさと安心を第一に考えられている。

宗像克己さん（以下、宗像）「利用者さんによって状態が違うので、各ユニットのリーダーが状況に応じた活動を行っています。コロナ前はたくさん行っていたレクリエーションもかなり制限されているものの、少人数で感染のリスクに配慮しながらの活動など、できることに取り組んでいます。施設周辺にはのどかな田園風景が広がっているのですが、このお散歩コースは利用者さんに人気です。また、当グループが開所している児童発達支援、放課後等デイサービス事業所が隣接しているので、そこの子どもたちとの交流会なども行っています。認知症の症状がある入所者さんも、子どもを見て頭を撫でたりしており、こうした交流は認知症の進行予防にも効果があると感じています。また、核家族化が進む中、子どもたちにとってもおじいちゃん・おばあちゃんと触れ合える良い機会になっています」

コロナ禍で外出などが制限される中、閉じこもりがちな状況を少しでも良くするため、日々の生活に楽しみを作る工夫がなされている。

誰もが無理なく長く働ける環境づくり

介護職のスタッフの平均年齢が高いということで、誰もが無理なく長く働ける環境づくりを目指している同施設。抱え上げない介護（ノーリフティングケア）や介護ロボットなど、業界の新しい取り組みも積極的に導入している。

原田「私がもともと介護の現場出身ということもあり、どのようにしたら皆さんが心地よく働ける場所になるかを常に考えています。例えば、介護の現場では、入浴介助や移乗介助など、利用者さんを持ち上げる場面が多くあり、腰痛を引き起こす一つの要因として、問題視されてきました。この問題を解消するために、数年前に導入したのが『抱え上げない介護』です。これは、スタッフの負担軽減になるだけでなく、利用者さんにとっても余計な緊張を与えない、質の良いケアの提供に繋がっています」

常に現場にいるという原田施設長。現場の課題解決に繋がるような新しい取り組みも、施設長が実際に体験しながら積極的に取り入れているという。

宗像「私の職場は、一言で言うと、非常に風通しの良い職場です。施設長が現場にいることで、現場から上がった声にすぐ対応することができ、より働きやすい職場になっていると思います。誰もが意見を出しやすい環境が整っているので、やりたいことが実現するスピードが早く、それが仕事に対する誇りややりがいにも繋がっているように感じます」

職員育成のための研修なども頻繁に行われていて、スタッフ間のコミュニケーションにも役立っている。

原田「新しい取り組みは、それまでのやり方を変化させることでもあり、大変なこともありますが、それが最終的には利用者さんのためになるという認識を皆で共有しながら進めています。人それぞれ、考え方やものさしの長さは少しずつ違うと思いますが、目指すところが同じであることが大切です。『利用者さんが余生を過ごす場として、毎日を楽しく、自宅で過ごすように生活していただけるようサポートする』を目標に掲げ、取り組んでいます」

同施設は、看取りにも力を入れている。病気などで入院が必要になった場合、最期を看取れないことも多い中、家族がゆっくり過ごすことができるよう、施設で看取りができる体制を整えている。

求めているのは、誇りとやりがいを持って働ける人

学生向けの就職説明会への参加や外国人スタッフの登用など、積極的な採用を行いながら、人材育成にも力を入れている。

原田「より良いケアを提供するために、年間通して50回ほどの研修を行っていて、医療・介護の基本、接遇など基礎をしっかり学べる環境を整えていますので、これまで介護とは全く違う分野で働いていた異業種出身の人も心配ありません。実際に、美容師やアパレル関係で働いていた人なども活躍しています。初めは資格がなくても、現場で経験を積みながら資格を取得することもできます」

求めている人材について伺ってみた。

宗像「誇りとやりがいをもって、介護の仕事に取り組める人を求めています。また、人対人の仕事ですので、相手への思いやりの心を持って接することができるというのも大切です。例えば、声かけの際の抑揚やボリュームひとつとっても、相手にどれだけ配慮できるかが大事です。利用者さんを自分の家族のように思って接することができる人と一緒に働きたいですね」