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お話を伺った方

一戸 陽子（いちのへ ようこ）

株式会社ふれあい 取締役会長
学習塾を経営後、介護スタッフの養成講座を主催。2004年に株式会社ふれあいを創業し、介護事業を開始。

立石 真紀（たていし まき）

デイサービスふれあい 現場チーフ
2014年に株式会社ふれあいに介護スタッフとして入職。2020年より現職。

2004年に創業した株式会社ふれあい（以下、ふれあい）は、デイサービスふれあいや有料老人ホームみふねの郷（以下、みふねの郷）の運営を行っている。ふれあいが大切にしているのは、利用者の残存機能、つまりできることを尊重すること。

どのようにできることを尊重しているのか、どんなスタッフが働いているのか。取締役会長 一戸 陽子さんとデイサービスふれあいで働く立石 真紀さんに話を伺った。

利用者の人生を預かる仕事

代表を務める一戸さんは、起業に対する思いを次のように語る。

一戸 陽子さん（以下、一戸）「介護とは、利用者さんの人生をお預かりする仕事です。利用者さんにとって楽しさがなければ、生きがいをもって生活できません。美味しいものを食べ、笑い声が絶えないデイサービスを作りたいと考えて創業しました」

立石さんは、一戸さんに誘われ介護の仕事をはじめたという。

立石 真紀さん（以下、立石）「最初は、介護の仕事をはじめるつもりは無かったんです。介護の仕事をすることを想像したときに、責任の重さを感じて怖くて。でも、『週2回勤務くらいからでもいいからやってみない？』『向いていると思う』と一戸さんに声をかけてもらい、やってみることにしたんです」

そして実際に働きはじめた立石さんに、忘れられない瞬間が訪れる。

立石「排泄介助に入った利用者さんから『ありがとう』と言われて。それは、ずっと忘れられないですね。その言葉には利用者さんから私へのやさしさも感じました。自分には難しい仕事だと思っていたけれど、やればできるんだ！と。今も仕事を続けている理由につながっています」

「できる」を尊重することが、生きがいにつながる

利用者と接する上で大切にしていることを聞くと、お二人は次のように話す。

立石「利用者さんの残存機能、できることを尊重するようにしています。すぐには歩けないのであれば立つだけでも、椅子から立とうと力を入れるだけでもいい。『できた』という感覚が生きがいにつながるのではと思っています。10人いたら10人それぞれのできることが絶対にある。ある音楽をかけると、かつて働いていたことを思い出すのか、レジ打ちをはじめる方もいるんですよ」

一戸「利用者さんにはここで過ごす日々を楽しく過ごしてもらいたい。なので、それを実現するためにも、目配り、気配り、心配りは大切にしてほしいと伝えています。

私は朝出勤すると、一人ひとりの利用者さんの肩に手をあてて挨拶するんです。そのときの雰囲気や手に伝わる温度で、体調や気分の良し悪しを感じたい。これも目配り、気配り、心配りの行動のひとつだと思うんですよね」

続けて一戸さんは、「私たちの関わりが間違っていなかった」と感じた瞬間を語る。

一戸「みふねの郷では、正月の期間など、一時的に帰宅される利用者さんもいます。ある方が施設に戻られたときに『こっちも落ち着くね』と言っていただけたんです。ありがたいですよね。報われた感覚がありました」

知識や経験よりも人間愛が大事

日々利用者と向き合っているふれあい。スタッフの特徴をたずねてみた。

立石「明るさですかね。もちろん、それぞれの特徴はあるんですけど」

一戸「施設をはじめて訪問した別事業所のケアマネジャーからも『施設の雰囲気が明るいですね』『下を向いている利用者がいないですね』と驚かれるんです。それはスタッフが明るく盛り上げているからだと思います」

立石「あとは、人と関わるのが好きな方は多い気がします。実は私、集団行動に苦手意識があるんですけど（笑）。でもふれあいで働いていると、そう感じることがない。私にとっては、変に気をつかわなくていい家族のような関係性が築けていると思います。

さらにいうと、尊敬できるスタッフがたくさんいて。私は感情が揺らいでしまうこともあるのですが、周りのスタッフは安定して、穏やかでやさしいんです。常に利用者さんのことを第一に考えて声かけやリアクションをしている。利用者さんもその方々を信頼しているのが、そばからみてわかります。一緒に働くスタッフの行動から教わることが多くあるんです」

スタッフを支える仕組みについてたずねると、一戸さんはこう話す。

一戸「キャリアアップや資格取得支援にも力を入れています。研修費用は会社負担で、情報収集のため外部研修への参加も推奨しているんです。

入職したばかりのスタッフには、指導担当の先輩スタッフ3名がチームを組んでサポートしています。スタッフそれぞれで教えることが違うと混乱するので、チームでどう教えていくかすり合わせてもらっているんです」

どんな人と一緒に働きたいか、たずねると「知識や経験は必須ではない」という。

一戸「人間愛を持っていることが、介護の仕事には欠かせません。人がやることって『何でこんなことをするのだろう？』ということもありますよね。思ってもいないような行動も、寄り添い包み込めるのは、人間が好きだからこそだと思います。そういった姿勢で仕事に臨めば、もっと介護を良くしていこうという気持ちになっていくはずです」